タクシードライバーが起こしやすい交通違反

「タクシーは交通違反で捕まらないんだよね?」

と時々聞かれるのですが、そんな事はありません。

よく捕まります。

私の会社では、毎日のように誰かが警察の取り締まりを受けていて、その結果、毎月「免停」で仕事が出来ない人が出てしまいます。

でも、交通違反を起こしてもそれだけで済めばいいのですが、その先には交通事故の危険が潜んでいます。

そもそも、交通事故が起きやすい危険な場所だから、いろいろと制限がされているのです。安全に運転するためには、やはりそれらの規制や制限は守らなければいけません。

では、どうしてそんなにタクシーは警察の取り締まりを受けてしまうのでしょうか?

ここにも、タクシーという仕事が関係しているかもしれませんね。

このページでは、タクシーが起こしやすい交通違反について紹介します。

新人ドライバーが起こしやすい交通違反

深夜の繁華街で付け待ちの「駐停車違反」

新人のタクシードライバーは、配属前の研修で「交差点での付け待ちは駐停車違反で取り締まりを受けるので、絶対にやってはいけない」と厳しく教育されます。

ところが、営業所に配属されて、深夜に繁華街を流してみると、交差点の中や横断歩道の上で沢山のタクシーが付け待ちをしている光景を目にして

「なんだ、やってんじゃん」

と、タクシー営業の現実に驚きます。

その後、何度も繁華街を流していると、お酒を飲んでいるお客様は、流しているタクシーには見向きもせずに、交差点で付け待ちをしているタクシーにどんどん乗っていくのに気がつきます。

「オレも、やろっ!」

確かに、酔っているお客様は、交差点で違法駐車をしているタクシーに乗るのですが、ふと気が付くとお巡りさんが窓ガラスを「コンコン」とノックをしていて、駐停車違反の取り締まりを受けることになります。

路上や横断歩道上での付け待ちは駐停車違反です。交通の妨げになり、多くの人に迷惑をかけています。捨て身で営業をする必要はありません。絶対に止めましょう。

青山公園前での「放置駐車違反」

青山霊園と青山公園に挟まれた道路は、東京都内で唯一「タクシーだけが駐車違反にならない場所」です。タクシー以外の車を停めると駐車違反です。

ただし、この道路ならばタクシーをどこに停めでもいいわけではありません。標識で範囲が指定されています。

毎年この範囲の外側にタクシーを停めてトイレや買い物に行って、駐車違反の取り締まりを受ける新人ドライバーが出ています。

この場所に限らず、コンビニや公衆トイレ前でのタクシーの違法駐車は、一般の方に多大な迷惑をかけています。駐車監視員の人も重点的に取締りを行っています。

絶対に止めましょう。

首都高での「速度超過違反」

首都高の制限速度は、湾岸線だけが80kmで、それ以外は60kmです。

あまり首都高を走っていなかった新人ドライバーは、この制限速度を知らないこともあります。

ところが、首都高を実際に走ってみると、その制限速度が妥当なことを実感します。

首都高は「高速道路」とは名ばかりで、カーブが多くて見通しが利かず、道幅も狭くて路肩も無く、合流車線は短くて複雑と、車が安全に走行するための配慮がなされていない危険な道路です。

こんな道路を、タクシーだけでなく、大型トレーラーや二輪車も100kmを越える猛スピードで走っているので、毎日のように大事故が起こるのは当然です。

そして、このように危険な道路なので、昼間は白バイ、夜は覆面パトカーが取締りを強化していています。

制限速度は標識にもしっかりと書いてあるのですが、お客様から「出来るだけ急いで下さい」などと言われると、新人ドライバーはどうしてもスピードを出してしまい、取締りを受けてしまいます。

私の会社でも、毎年首都高での交通事故が起きています。原因のほとんどはスピードの出しすぎです。

事故防止のためにも、スピードを抑える勇気を持ちましょう。

タクシードライバーだから起こしてしまう交通違反

タクシードライバーとしての経験が少ないと、何でもお客様の言うことを聞いてしまいがちです。

しかし、交通違反につながることは、絶対に断わるようにしましょう。やんわりと、申し訳なさそうにお断りするのが「コツ」です。

そうしないと、大事なお金をどんどん国庫に納めるだけでなく、免停で仕事ができなくなって、生活が脅かされてしまいます。

もちろん、大事故に繋がる危険もあります。

進路変更禁止違反

黄色い線をまたいで車線変更をする違反の事です。

交差点の手前でお客様をお乗せしたら、その車線が左折レーンで車線変更禁止のような場合があります。

ここでお客さんに「まっすぐ行って」とか「右に曲がって」と言われて車線変更をすると、交差点ににいる警察官に進路変更禁止違反で取締りを受けます。

また、交差点の手前の進路変更区間を走行中に、お客様から急に「右に曲がって」と言われて、取締りを受けるケースもあります。

指定通行区分違反

交差点手前の道路に書いてある矢印と違う方向に進行する違反です。

これも、交差点の手前の左折レーンでお客様をお乗せして、お客様の指示でそのレーンから直進するような場合に取締りを受けます。

Uターン禁止違反(指定横断等禁止違反)

これも、お客様をお乗せしてすぐに、お客様の指示でUターンをして取締りを受けるケースが多いです。

また、目的地が道路の反対側にあり、お客様に「Uターンして停めて」と言われてUターンをして、取締りを受けることもあります。

通行禁止違反

朝や昼、夕方等、一時的にスクールゾーンや歩行者専用になる道路があります。

このように、一時的に自動車が通行できない道路等を通行すると、通行禁止違反で取締りを受けます。

お客様に「大丈夫だから、ここを通って」と言われて、そのまま進行して道路の出口にいる警察官に取り締まりを受けることが多くなります。

タクシーでなくても起こしてしまう交通違反

これらの違反はタクシー以外の車でも起こしやすいのですが、長時間の運転で集中力が切れてくると起こしやすくなります。

重大事故に繋がる危険もあるので、十分に注意をしましょう。

信号無視

信号無視はとても多いです。

よくあるのは、右左折時には左折矢印や右折矢印が出てから進行しなければいけない交差点で、直進矢印しか出ていないのに曲がってしまうケースです。

まわりの車につられて進行してしまうケースと、疲れて判断力が鈍っていて勘違いで進行するケースがあります。

また、黄色から赤に変わる直前に交差点に進行して、信号無視で取り締まりを受けるケースも多くあります。

「黄色」信号は原則として「止まれ」です。安全に停止できない時に限り他の交通に注意して進むことができるとされています。

そのため、微妙なタイミングの時には、かなり高い確率で取締りを受けることになります。

一時停止違反

「止まれ」の標識では、必ず一時停止する癖を付けておかないと、出会い頭の事故の危険性が高まります。

また、最近特に一時停止違反で取締りを受けるケースが目立ちます。

もちろん、必ず一時停止をしていれば、取締りを受けることはありません。

横断歩行者等妨害等違反

聞きなれない違反ですが、横断歩道を歩いている人の直前を通過すると、この違反で取締りを受けます。

道路交通法第38条には次のとおり記載されています。

  • (横断歩道等における歩行者等の優先)
    第三十八条 車両等は、横断歩道又は自転車横断帯(以下この条において「横断歩道等」という。)に接近する場合には、当該横断歩道等を通過する際に当該横断歩道等によりその進路の前方を横断しようとする歩行者又は自転車(以下この条において「歩行者等」という。)がないことが明らかな場合を除き、当該横断歩道等の直前(道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線の直前。以下この項において同じ。)で停止することができるような速度で進行しなければならない。この場合において、横断歩道等によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者等があるときは、当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない。

道路交通法に書いてあるとおり、日本では横断歩道を渡ろうとしている歩行者がいる時には、必ず横断歩道の手前で停止しなければなりません。

確かに、二種免許取得の自動車教習所でも厳しく言われて、卒業検定でもその通りにしないと合格できませんでした。

実際には、横断歩道上に人がいても横断歩道を横切る車が多いのですが、タクシー会社ではこの違反で取締りを受けたドライバーが何人もいます。

最近では、赤信号でも平気で横断歩道を渡る歩行者や自転車も多いので、事故を防ぐ意味でも、横断歩道手前での徐行や一時停止にも気を使う必要があります。

交通違反は会社にもペナルティがある

タクシーが悪質な交通違反(「駐停車違反」「放置駐車違反」「速度超過違反」)を起こした場合には、警察からタクシーの監督官庁である国土交通省関東運輸局に通報が行きます。

そして、違反の累積件数が一定以上になると、その違反を起こしたタクシー会社に国土交通省関東運輸局の監査が入ります。

さらに、この監査中に他にも問題が発覚したりすると、タクシー会社に対して厳しい行政処分が課されることになります。

行政処分を受けると、一定の期間は営業できるタクシーの台数を減らされるので、タクシー会社はこの行政処分にまで発展する悪質な交通違反(「駐停車違反」「放置駐車違反」「速度超過違反」)をとても嫌がります。

そのため、会社からこれらの違反を起こしたドライバーに対しても、乗務停止などのペナルティを課すことがあります。

交通違反の反則金を支払うだけでなく、給料まで少なくなるのでは、タクシーの仕事をする意味がありません。

交通違反には十分に注意しましょう。

新人ドライバーに多い!タクシーの事故

タクシードライバーは運転のプロと言われています。
職業ドライバーなので、運転が上手だと思われているのでしょう。

ところが、タクシーの交通事故は頻繁に起こっているのです。

タクシーの車両が100台以上ある会社や営業所では、毎日とは言わないまでも1週間に2〜3件というペースで交通事故が発生しています。その原因は、タクシーが自家用車や営業車とは異なる動きをしなければならないこと、それから、新人のタクシードライバーはこれまではなかった心理状態に晒されることにあります。

ですから、タクシードライバーの仕事を始めると、これまで自家用車や営業車では全く交通事故とは無縁だった方でも、事故を起こす可能性が高くなります。つまり、自動車の運転に自信がある方や、実際に運転が上手な方でも事故を起こすかもしれないということです。

タクシードライバーにとって、交通事故は仕事を失うことに繋がる可能性もあります。特に仕事を始めたばかりの新人タクシードライバーは、地理に不慣れなこともあり、事故を起こす危険性が高まってしまいます。

そこでこのページでは、新人タクシードライバーが実際に起こした事故の例とその原因についてご紹介します。これからタクシードライバーを目指そうとする方や新人のタクシードライバーの人は、ぜひこのページに書かれていることに注意をして、ぜひ新人の厳しい時期を乗り切って頂きたいと願っています。

新人ドライバーに多い交通事故

お客様を見つけた時に起きる交通事故

新人のタクシードライバーが、片側二車線の道路を走っているとします。
そして、このタクシーはこの先の交差点を右折したいので右側の車線にいます。

交差点まであと100メートルという距離に差し掛かった時に、

左側の歩道で手を上げているお客様

を見つけました。

この場合、車線変更が可能な道路であれば、次のような動作を行います。

  1. まずはルームミラーとサイドミラーと目視で左側車線に自動車やバイク・自転車がいない事を確認して左側の車線に移動。
  2. さらにもう一度後方と左側の安全を確認して、路肩に車を寄せてお客様の前で停車。

ところが、タクシードライバーの仕事を始めたばかりの頃は、この一連の安全確認の動作ができません。頭では安全確認をしなければいけないと分かっているのですが、お客様を見つけると反射的に左側に寄っていってしまうのです

このことは、普段の運転では100%安全確認が出来ているドライバーでも同じで、お客様を見つけただけで体が反応してしまい左側に寄っていきます。私も、しばらくはこの安全確認が出来ませんでした。

科学的な根拠は無いのですが、「お客様を見つけたらお乗せしないといけない」と言う意識が、安全確認という動作を打ち消しているのでしょうか。そのため、新人ドライバーがお客様を見つけた時に、左側にいる自動車やバイク・自転車と接触するという事故が頻発しています。

私は幸いにも事故を起こすことが無く、仕事を始めて6ヶ月を過ぎた頃に突然安全確認が出来るようになりました。この時期は、少し道を覚えてきて、ほんの少しだけ余裕らしきものが出てきた頃と重なります。今では、お客様を見つけると、何も考えていないのに反射的に左後方を見て安全確認をしています。

新人ドライバーの方は、普段から車線変更の時には必ず左右の後方確認を行うことを励行して、少しでも早くお客様を見つけた時にも安全確認が出来るように心がけてほしいと思います。

ドアを開けるときに起きる事故

さて、無事にお客様の前にタクシーを停めた後も危険は続きます。

ドアを開ける前には、必ず左後方に自転車やバイクがいないことを確認するのですが、新人の時にはこれも出来ません。

お客様の前で停車すると、右手が勝手動いてドアを開けてしまうのです

ここで、開けたドアに自転車やバイクが接触するという事故が頻発しています。

自転車は、車とガードレールの間がどんなに狭くても、何も考えずにすり抜けていこうとします。前に停車しているのがタクシーだとかお客様が乗車しようとしていることなど見ていません。ましてドアが開くかもしれないなどとは思ってもいません。

ですから、ドアを開ける前には、必ず左後方の安全確認をしてからドアを開けるようにして下さい。

お客様をお乗せした後に起きる事故

無事にお客様をお乗せした新人ドライバーは、「ご乗車ありがとうございます。どちらまで参りましょうか?」と行き先を尋ねますが、まだ行き先を言われても知らない場所ばかりです。

そのため、行き先を言われた段階で、もう頭の中では行き先と経路のことがグルクルと回って、安全確認の事など頭から消えてしまいます。

そして、右側後方の安全確認を行わずに車を発進させてしまい、右側を走っている自動車・バイク・自転車と接触するという事故が発生しています。

この、車を発進させる時に右側後方を確認するという動作も、ドライバーの気持ちに余裕が生まれて来るまでは出来ません。朝の点呼で安全確認の事を何度も言われて、お客様をお乗せするまでは頭で分かっていても、お客様をお乗せすると出来ないのです。

この場合にも、車を発進させる時には反射的に後方確認が行えるように、普段から後方確認の意識を持って運転することが大切です。

横断歩道上の事故

新人のタクシードライバーにとって、行き先の場所と経路が分からないことはとても大きな弱点です。

車を走らせてはいるものの、常に頭の中では行き先の場所と経路のことが渦を巻いています。常に大きな考え事をしながら運転をしているようなものなので、このことは他の場面にも影響してきます。

特に多いのは、交差点を右左折する時に横断歩道上の自転車や歩行者と接触する事故です。

自動車が右左折しながら横断歩道を横切る時には、死角となる右側後方や左側後方を特に注意しなければいけないのですが、この確認が疎かになり事故が起きています。場合によっては、目の前にいる人や自転車に気が付かないこともあるほどです。

このような事故は、地理に詳しくなるにつれて減ってくるのですが、やはり普段から左右の安全確認を行うクセを付けることが大切です。

脇見運転による追突事故

行き先や経路に不安があると、脇見運転による追突事故も起きています。

脇見運転にもいろいろな原因があるのですが、新人のタクシードライバーに多いのは、ナビを操作したり地図を見たりして起きる事故です。運転中に行き先や経路に不安になると、ナビをジッと見つめてしまい追突事故を起こすことがあります。

車が停止している時にナビを操作していて、知らず知らずのうちにブレーキが緩んで追突するという事故も起きています。ナビの操作や地図を見るときには、車をしっかりと停止させる事が大切です。

目的地に近づいた時に起こる事故

お客様の目的地が、「〇〇交差点」のような場合には、その目的地の2つ前の交差点までに、目的地の交差点の何処に車を停めるのか、右左折をするのかを確認することが大切です。

その理由は、お客様の答えによって、目的地まで走る車線が変わってくるからです。

その確認を行わないと、目的地である交差点の直前で

「ここを右に曲がって!」

「ここを左に曲がって!」

「ここで停めて!」

と言われます。

これは新人ドライバーに限らないのですが、お客様にそのように言われると、身体が勝手に反応をしてしまうのです。

そして、後方の安全確認をせずに車線変更をしてしまい事故が起きています。

お客様が降車される時に起こる事故

お客様を無事に目的地までお送りして、運賃の精算を済ませてからドアを開けます。

この時には、お客様をお乗せする時と同じように、必ず左側後方の安全確認をしなければならないのですが、これを怠って開けたドアに自転車やバイクが接触する事故が頻発しています。

事故を防ぐ方法

事故の原因は地理がわからない不安感

これまでお話しをした事例でお分かりのとおり、新人のタクシードライバーが起こす事故の原因は、ほとんどが安全確認の不履行です。

でも、どうして安全確認ができていないのかというと、安全運転に関する知識やスキルが不足しているというよりは、新人ドライバーの心理状況、特に道路や経路に関する知識の不足による不安心理が影響していると思っています。

では、どうすればこのような新人ドライバーの地理に関する不安感を軽減できるでしょうか。

ひとつの方法は、新人ドライバーは全て自分で解決しようと思わない事でしょうか。道がわからない時には、最初からお客様に助けて頂こうと思って仕事に取り組むしかありません。そして道を早く覚えてしまう事。どの会社でも、「新人で地理に不案内なので、道を案内して頂けないでしょうか?」という話法を指導されると思うので、3ヶ月から6ヶ月位、そしてその後でも道がわからない時にはこの話法を使ってもいいと思います。

というのも、最初の1ヶ月位はこの話法を使っていても、だんだんとお客様からいろいろ言われたり恥ずかしくなったりして、この話法を使わなくなってしまうからです。私の場合は、仕事を始めた頃にはほとんど道が分からなかったので、お客様に道を教わるしかありませんでした。確かに辛いこともありましたが、目的地の場所や経路に関する不安が無くなるにつれて、安全運転に集中する事が出来るようになりました。

ただし、今でも普段走り慣れていないエリアや、始めて行った場所で運転をしている時には、目的地の場所や経路に関する不安感に意識を奪われて、安全確認が疎かになっている自覚があります。

このことからも、新人ドライバーによる交通事故を防ぐためには、常に安全確認を行うことを意識させるだけで無く、場所や経路に関する不安が無くなるように、出来るだけ早く都内の地理に詳しくなることが重要だと考えています。

笑顔が決め手!タクシードライバーの接客術

タクシーの業種は運輸業ということになっています。

しかし、鉄道・バス・トラック等の他の運輸業と比べると、お客様と会話をする時間が長いことが特徴です。

例えば、タクシードライバーは、お客様の受付、輸送、お会計まで1人でこなさなければなりません。場合によっては荷物の出し入れまで行います。

そのため、タクシードライバーは、小売業・飲食業といった接客業・サービス業的な対応も求められます。

このページでは、普段私が接客において心がけていることをご紹介します。

お客様をお迎えする時の対応

まずは感謝の言葉を伝える

私がお客様をお迎えする時には、大企業の受付にいる女性ように振る舞うように心がけています。

タクシーでは「いらっしゃいませ!」は変ですから、ドアを開けた時には「お待たせしました。ご乗車ありがとうございます!」という言葉でお客様をお迎えします。

これはお客様に対して「お客様を歓迎していますよ!」ということをお伝えするためです。

お客様に「お客として扱われている」と思ってもらうことが大切です。

笑顔を添えると効果抜群!

笑顔を添えることはとても大切です。笑顔で「ご乗車ありがとうございます!」とお客様をお迎えすることにしています。

そんな事出来るかよ!

と思いますよね。

私も以前はそう思っていました。

ところが、あるマナー研修で「お客様のタクシードライバーに対する評価は第一印象で決まる。そして、その評価は降りる時まで変わらない」という話を聞いて、試しに笑顔をやってみました。

そしたら、笑顔を意識した以降、接客が楽になったのです。

びっくりです!

お客様に気分良くご乗車頂くと、タクシードライバーも気持ち良く時間を過ごせます。

しかし、お客様の機嫌が悪いと、こちらも気分が悪くなってしまいます。

鶏が先か卵が先かの話しなのですが、こちらの気分が悪くなる原因は自分が作っていたのかもしれません。

笑顔は相手に「私はあなたの敵ではありませんよ」と伝える効果があり相手が心を許しやすくなるそうです。

自分の考え方がポジティブになる効果もあるそうです。

「よくお客様から文句を言われる」

と悩んでいる硬派の方は、試してみてはいかがでしょうか。

運転中はさりげなく気を使う

運転中は、基本的にこちらからお客様に話しかけることはありません。

話しかけるとしたら、信号で止まっている時に「エアコンの温度はいかがですか?」と尋ねるだけにしています。

私は人と話すのが得意ではなく、運転に集中もできないので、お客様が話しかけてきた時だけ、お話しをします。

その時にも、言葉使いに気をつけて、ハキハキと話しをします。決してお客様とタメ口で話しをしたり、友達感覚で話しをしてはいけません。

特に若いお客様の時には、気をつけなければいけません。

その他には、さりげなくお客様の様子を伺っていて、何かをしてもらいたいような時だけ対応するようにしています。

笑顔でお客様をお見送りする

お客様の目的地に到着したら「ご乗車ありがとうございました」と笑顔で挨拶をします。

そして、料金の精算の時には、ホテルのキャッシャーのように振る舞います。

ここで特に気をつけたいのが言葉使いです。最後までお客様に気持ち良くご利用頂きましょう。

後方の確認をしてドアを開けたら、最後にまた「ご乗車ありがとうございました!」と挨拶をします。

この時に、頭を軽く下げると、とても丁寧な感じがします。

良い印象を受けた人になりきってみる

先ほどから「企業の受付の女性のように」などとお話ししていますが、これは私が仕事でよく接していたので、イメージをしやすいからです。

受付の方でなく、デパートの店員さんでも、ファミレスやコンビニの店員さんでもいいので、自分が気持ち良く買い物ができた時の店員さんの様子を思い浮かべて、真似をしてみるといいと思います。

別に正解はないので、いろいろと試してみるといいでしょう。

嫌な思いをした場面は、反面教師に使えます。

タクシードライバーの給料・年収はどれぐらいなのか?

世の中ではタクシードライバーの給料は安いと言われています。

ところが、タクシードライバーの給料は完全に歩合給なので、年収で見ると300万円の人もいれば600万円の人もいるのです。

年収が300万円であれば、世の中的には

「安い!」

と思う人が多いでしょう。

ところが、年収が600万円となると、

「えっ!そんなにもらえるの?」

と思いませんか?

ちなみに、平成28年の「東京都全産業男性労働者」の平均年収は677万円です。

この数字と比べてみると、年収600万円は決して多い収入ではないのですが、普通のサラリーマンと比べても遜色のない金額だと思います。

しかも、20代や30代前半の人であれば、遜色がないどころか、かなりいい金額です。

しかし、タクシードライバーという仕事で年収600万円を稼ぐということは、実はとても大変なことでもあるのです。

そこで、このページでは、タクシードライバーの給料・年収についてお話しします。

これからタクシードライバーの仕事をしたいと思っている人にとっては、給料のことがいちばん重要な問題なので、このページではできるだけ現実的なお話しをしたいと思います。

東京都タクシードライバーの平均年収

(出典:東京ハイヤータクシー協会「東京のタクシー2017」)

東京ハイヤータクシー協会が発表している平成28年の東京都タクシードライバーの

平均年収は443万円ででした。

上の図を見ていただくとわかるのですが、平成26年は392万円、平成27年は393万円と400万円に届かなかったのですが、平成28年には443万円と前年から50万円も上昇しています。

443万円を単純に12で割ると36万9千円で、この金額が毎月の平均月収になります。(賞与分も含みます。)

ただし、上の図にもあるように、東京都の全産業男性労働者の平均である677万円と比べると234万円も低い水準にあります。

私は自分ではかなり頑張っているつもりなのですが、年収は毎年約400万円前後です。

私の場合には、サラリーマン時代の年収の半分以下です。

歩合制なのだから「もっと頑張れ」と思うかもしれませんが、後で具体的にお話ししますがタクシードライバーで600万円以上の年収を稼ごうとすると1出番の平均売り上げで7万円以上が必要になるのです。

1出番当たりの売り上げが7万円という数字は、各タクシー会社の上位数パーセントの人しか達成できない売り上げです。

ちなみに、東京のタクシードライバーの1出番当たりの平均売り上げは、4万9千円です。

売り上げがトップクラスのタクシードライバーでも、年収は600万円台なのです。

年収が700万円を超える人は、ごくわずかしかいません。

このことを考えると、タクシードライバーの給料は他の産業と比べるとかなり低い水中に抑えられているのだと思います。

タクシードライバーの給料・賞与の計算方法

タクシー会社の給料算出方法

タクシードライバーの給料は、ほとんどの会社が完全歩合制です。

東京のタクシー会社では、月間の売上げの約60%がタクシードライバーの給料として支払われています。

※給与規定や算出方法は会社によって大きく異なります。

例えば、1出番平均の売上げが5万円(消費税分は除きます)のタクシードライバーが月に12出番の仕事をすると、月間の売上げは「5万円×12出番=60万円」になります。

この月間売上げの約60%、つまり「60万円×60%=36万円」が1ヶ月の給料の金額になります。

そして、年収は「36万円×12ヶ月=432万円」となります。

タクシー会社の賞与算出方法

タクシードライバーに賞与が支払われる会社もあります。

私が勤務している会社でも賞与が支払われています。

しかし、その賞与の内容は一般の会社の賞与とは大きく異なっています。

何が違うのかというと、タクシードライバーに支払われる賞与というのは、本来であれば毎月支払われる給料の一部が会社に積み立てられて後払いされるだけなのです。

会社の業績が良かったので毎月の給料の他に賞与が支給されるというわけではありません。

会社の資金繰りのために後払いにしている金額を「賞与」と呼んでいるだけなのです。

先ほど売り上げの約60%が給料として支払われると言いましたが、賞与がある会社の場合には売り上げの約60%が毎月の給料と賞与に分けて支払われることになります。

例えば、1日平均売上げが5万円で、歩合率の60%のうち、55%分を月の給料として支払い、5%分を賞与として支払うとします。

その場合、月間の売上げは「5万円×12=60万円」。

毎月のの給料は売上げの55%なので「60万円×55%=33万円」。

賞与分として会社に積み立てられる金額は「60万円×5%=3万円」となります。

賞与の支払い月は会社によって違うのですが、多いのは次のようなケースです。

  • 7月支払い:3月・4月・5月・6月の4ヶ月分=12万円
  • 12月支払い:7月・8月・9月・10月・11月の5ヶ月分=15万円
  • 3月支払い:12月・1月・2月の3ヶ月分=9万円

このように、賞与の年間合計額36万円が、7月に12万円、12月に15万円、3月9万円と、年3回に分けて支払われます。

タクシードライバーはいくら位まで稼げるのか

タクシードライバーの拘束時間と走行距離

タクシードライバーの給料は歩合制なので

「頑張れば頑張るほど給料が多くなる!」

というのは間違いではないのですが、

実は青天井で給料がもらえるわけではありません。

その理由は、タクシードライバーには仕事を行う時に、いろいろと守らなければいけない規制があるからです。

その中で、売上げに大きく影響するのは、「拘束時間」と「走行距離」です。

※「拘束時間」とはタクシードライバーにだけ存在する概念です。始業時刻から終業時刻までの時間で、労働時間と休憩時間(仮眠も含む)の合計時間のことを言います。

隔日勤務のドライバーの「拘束時間」は、厚生労働省からの指導で、1ヶ月262時間までと決められています。※ただし労使協定で1年のうち6ヶ月間だけは270時間まで延長できます。

262時間をを12日で割ると1回の出番の拘束時間は最長で21時間です。

つまり、朝7時から仕事を始めるタクシードライバーは、翌朝4時までが最大の勤務時間になります。

次に「走行距離」ですが、これは行政から1出番あたり365kmまでと制限を付けられています。(高速道路の走行距離は除かれます)

つまり、1ヶ月12出番(月によっては13出番の時もあります)、1出番あたり21時間、走行距離365kmの範囲でしか仕事が出来ないのです。

タクシードライバーの1日の売上げ

平成28年における東京のタクシードライバーの1出番あたりの平均売上げは約4万9千円です

日々の売上げは、その日が何月なのか、何曜日か、天候はどうか、月の初めか終わりかなどで大きく違ってくるのでなんとも言えないのですが、およそ3万円から8万円の中に納まります。

日々の売上げだけ見れば、8万円できる人は全体の1%から2%、7万円出来る人は全体の5%前後ではないでしょうか。

私も年に1~2回は1日に8万円できる日があります。

最近は、コンスタントに1日に9万円・10万円を売り上げる人はほとんどいません。

たまに奇跡的に9万円・10万円を売り上げる人が出る位です。

これが1出番の平均売り上げとなると、営業所でトップの人でも7万円台です。

私の会社では1出番平均で8万円出来る人はほとんどいません。

私は1出番平均5万円しかできませんが、順位でいくと上から50%前後のところにいます。平凡な私でも5万円なら何とかコンスタントにできる手ごたえがあります。

入社1年目の人でも1出番平均で6万円を超える人が何人もいます。

ですから、頑張れば1出番平均で6万円、さらに頑張れば、1出番平均6万5千円は十分に狙える金額です。

タクシードライバーの現実的な給料と年収

例えば、給料の歩合が55%、賞与が5%の会社があるとしたら

1出番平均売上げが5万円の場合:1ヶ月の給料33万円 年間賞与36万円 年収432万円
1出番平均売上げが6万円の場合:1ヶ月の給料39.6万円 年間賞与43.2万円 年収518万円
1出番平均売上げが7万円の場合:1ヶ月の給料46.2万円 年間賞与40.4万円 年収604万円

このあたりまでの数字が、現実的な収入のような気がします。

ダクシードライバーで年収1,000万円は、夢ではなくて不可能な収入です。

これからタクシードライバーになる人の目標金額

これからタクシーの仕事を始める人も、最初はかなり苦労をしますが、1年後には1出番平均で4万5千円から5万円は出来るようになると思います。

1出番平均5万円という数字は平凡な私でも達成出来ているので、まじめにコツコツと仕事を積み上げていけば決して出来ない売上げではありません。

ただし、この1出番平均5万円から1出番平均6万円に増やすのが少々大変です。

ここから売上げを伸ばせるかどうかは、個人の努力に加えてメンタルの強さや体力、さらに営業センスが必要になってきます。

残念ながら、私はなかなか出来ないでいます。

だだし入社して6ヶ月位で1出番平均6万円を軽々と超えて、1年後には7万円という営業所トップクラスの売上げを達成する人もいるので、実際に仕事を始めてみないことにはなんともわかりません。

とりあえずの目標は「月平均5万円達成!」がいいかな、と思っています。

まとめ

平成28年における東京のタクシードライバーの平均年収は433万円、平均月収は36万9千円でした。

ただし、タクシードライバーの給料は完全歩合制なので、頑張れば年収を増やすことも可能です。

1出番平均で6万円の仕事をすれば年収500万円、7万円の仕事をすれば年収600万円に到達します。

しかし、年収700万円を超える人はほんの一握りで、それ以上の収入を得ることは不可能です。

タクシーの仕事は決して楽ではないので、そのことを考えると他の産業よりもかなり低い水準に抑えられているように思います。

サラリーマンからタクシードライバーに転職をする場合には、現実的な給与水準を理解することが大切です。

タクシードライバーのアフターファイブ

「アフターファイブ」という言葉は死語になってしまいました。

アフターファイブとは、一般のサラリーマンンやOLの方の仕事が終わる時間が午後5時なので、「仕事を終えた後のプライベートな時間」という意味で使われていました。

そのアフターファイブがタクシードライバーにもあると言ったら皆さんは驚かれるでしょうか?

タクシードライバーの「アフターファイブ」も同じ意味なのですが、プライベートな時間が始まるのは午後5時ではなくて午前5時。

つまり、朝の5時から「アフターファイブ」がスタートするのです。

なぜ午前5時からアフターファイブがスタートするのか?

タクシードライバーの勤務時間は、所属する会社や営業所によって変わってきます。

しかし、B勤務と言われている「午前7時から翌日の午前3時まで」の時間帯で仕事をしている人がいちばん多いようです。

タクシードライバーの乗務時間は、1回の出番で21時間まで(3時間の休憩を含む)と定められています。

朝の7時に会社や営業所を出発したタクシードライバーは、翌朝3時までには会社や営業所に戻り、事務処理・売上金の納金・洗車を午前4時までに終わらせないといけません。

洗車が終わると、タクシードライバーの仕事はやっと終了です。

その後、会社にある風呂に入ったりシャワーを浴びたり、または仮眠室で休んだりして時間を潰し、アフターファイブに備えるのです。

アフターファイブの過ごし方

21時間も続いた乗務の後ですから、多くのタクシードライバーは、徒歩、自転車やバイク、電車通勤の人は5時前後の始発電車に乗って家路に着きます。

そこで、しっかりと朝食を食べて、お風呂に入り、お昼過ぎまでぐっすり寝て、起きてから夜までは自由な時間になります。

しかし「家に帰っても何もすることが無いよォ~」という人は、このアフターファイブにいろいろな事をやって楽しんでいます。

お酒を楽しむ

By: Smabs Sputzer
By: Smabs Sputzer

タクシードライバーにもお酒が好きな人が多いようで、朝の5時過ぎから「ちょっと一杯行くか!」と、何人かで連れ立って飲みに行く人もいるようです。

朝からお酒を飲むというのは、一般の方には「よほどの酒飲み」に思えるかもしれませんが、タクシードライバーをはじめ、多くの方が寝ている時間に仕事をする人にとっては当たり前の事です。

さらに、タクシー会社では「アルコールチェック」といって、タクシードライバーの乗務前と乗務後に、酒気帯びの状況で無いかどうかの測定が行われることも、朝からお酒を飲むことの一因になっているようです。

というのも、この「アルコールチェック」を行う機械は精度がとても高いので、乗務前の夜にお酒を飲みすぎるとこの「アルコールチェック」に引っかかり、事務所の中にアラーム音が鳴り響くのです。

もちろんアラームを鳴らすとその日は乗務できなくなり、引っかかるのが何度目かの人は「もう会社に来なくていいよ」と言われてしまいます。

そのため、タクシー会社で行う「忘年会」「新年会」「懇親会」などのイベントも、だいたい早朝か午前中に行われます。

私もこの仕事を始めてから知ったのですが、タクシー会社の周りには、タクシードライバーのために早朝から(お店によっては早朝まで)営業している居酒屋が何軒かあります。

また仕事帰りによく飲みに行く人に聞いてみると、繁華街まで行けば飲む場所には困らないようで、カラオケでもキャバクラでも何でも営業しているそうです。

繁華街で時々「日の出より営業」という看板を見かけて不思議に思っていたのですが、最近になってやっと納得することができました。

同好会や愛好会の活動に励む

By: DeusXFlorida (6,800,921 views) – thanks guys!

タクシー会社のホームページを見ると、同好会や愛好会の活動が盛んに行われているとの紹介があります。

私の会社でも、この同好会や愛好会の活動が活発に行われています。

タクシーの車両を100台程度保有している会社や営業所であれば、約250名のドライバーが在籍しているので、ほとんどの運動系と文化系の同好会・愛好会があるはずです。

運動系では、野球、ソフトボール、ゴルフ、テニス、卓球、ボーリングなど、文化系では釣り、将棋、囲碁、軽音楽、写真、鉄道、落語などの人気が高いようです。

そして、これらの同好会や愛好会の活動も、早朝5時過ぎからの「アフターファイブ」に行われています。

運動系の同好会や愛好会では、月に最低でも1~2回は練習や試合が行われていて、朝の7時ごろにはお揃いのユニフォームに着がえて出かけて行きます。

ボーリングなどはもちろん全員「マイボール」。ユニフォームは会社名や名前も刺繍されいる本格的なもので、中には学生時代には体育会に所属していた人などもいて、精力的に活動しているようです。

試合の相手は、同じ時間帯に活動している同業者が多いようです。同じ会社の営業所や近所にある会社、個人タクシーの組合のチームなどとリーグ戦を行ったり、大会を開催しています。

練習や試合は翌日が休日となる「明け」の日に行われることが多いので、試合の時には人数を確保するために、勤務シフトの変更も行われます。

勤務が終わった後に、2~3時間は仮眠をとって練習や試合に参加する人が多いようですが、私は体力に自信が無いのでとても同好会・愛好会には参加ができそうもありません。

運動不足の解消に励む

By: DieselDemon

タクシードライバーは乗務している21時間もの間、すっと同じ姿勢で座っているので、足腰や腹筋が弱くなり腰痛で苦しむ人も見られます。

そこで運動不足の解消のために、自転車やバイクを使わずに20分から30分の距離であれば、徒歩で通勤している人も多くいます。

電車通勤の人でも、自宅や会社の最寄駅から2駅や3駅分、時間にすると20分~30分の距離は歩いて、そこから電車に乗る人もいるようです。

私も同好会や愛好会に参加はしていませんが、通勤時や公休の日にはとにかく「歩く」ようにしています。

人間関係の構築に活用しましょう

タクシードライバーという仕事は、会社を出てしまうと約21時間の間ひとりで行動することになります。

私の場合には、この「ひとりでいる」ことが大好きなので、毎日心地よい時間を過ごすことができているのですが、人と交流することが好きな人には少々辛いかもしれません。

そのような場合には、この同好会・愛好会活動に参加して、同僚と人間関係を築いていくのもいいでしょう。

頼りになる先輩が見つかれば、公私共にいろいろと相談に乗ってくれるはずです。

ただし、このアフターファイブの過ごし方を含めて、タクシードライバーという仕事は、いろいろな面で自己管理が大切なのは言うまでもありません。

東京の観光タクシーについて思うこと

「東京観光タクシー」とは、タクシードライバーが観光案内をしながら観光名所を巡るもので、これまで一部のタクシー会社による独自のサービスとして運行されてきました。

そこで、2012年には、東京の観光振興の一環として、観光にかかわる有識者・機関・団体・タクシー業界で構成する「東京観光タクシー推進協議会」が設置され、「東京観光タクシードライバー認定制度」が創設されました。

この制度の発足は、個々のタクシー会社やタクシードライバーにおいても、「これまでタクシーを利用しなかった新たな顧客層」の取り込みや「タクシーで東京観光を行うという新たなニーズ」掘り起こしの起爆剤として期待されましたが、残念ながら運行実績は低調であると言わざるを得ません。

また、会社やドライバーによって、観光タクシー制度への取り組みに温度差がある事も、運行実績が伸び悩んでいる要因になっているかもしれません。

そこで、このページでは、東京の観光タクシーの現状と課題について、私なりの考えをお話ししたいと思います。

東京観光タクシーの概要

東京観光タクシーとは、タクシーを時間単位での貸し切りとして、顧客が希望する観光名所を巡り、観光タクシードライバーの認定を受けた運転手がガイドを行うという制度です。

利用方法

事前に観光タクシーを取り扱っているタクシー会社に連絡をして予約を行う。連絡の方法は「電話」「メール」「HPの申し込みフォーム」など、タクシー会社によって異なる。予約可能時間もタクシー会社によって異なる。

東京観光タクシーの料金(セダンタイプタクシーの場合)

  • 3時間コース:14,950円(運賃13,090円+ガイド料金1,860円)
  • 4時間コース:19,790円(運賃17,310円+ガイド料金2,480円)
  • 5時間コース:24,630円(運賃21,530円+ガイド料金3,100円)
  • 6時間コース:29,470円(運賃25,750円+ガイド料金3,720円)

利用可能人数

  • 1人〜4人(セダンタイプタクシーの場合)

顧客のメリット(バスと比べた場合)

  • 自分達の行きたい場所に行くことができる。
  • 他の旅行者に気兼ねなく楽しむことができる。
  • 出発場所・到着場所を駅・ホテルなど自分達の都合の良い場所に指定できる。
  • 荷物をタクシーのトランクに入れたまま観光が出来る。

顧客のデメリット(バスと比べた場合)

  • 自分達で行く場合を決めなければならない。
  • はとバスの東京半日コース(4時間50分 5,700円)スカイバスの二日券(3,500円)より割高である。
  • 別途、入館料・入園料・駐車場の料金などがかかる。
  • バスよりも車窓が低いので景色が見え難い場合がある。
  • ガイドの内容が期待を下回る可能性がある。

観光タクシードライバーの資格認定について

東京観光タクシー推進協議会会は、次の試験合格や協会が主催する研修を受講したタクシードライバーを、東京観光タクシードライバーとして認定しています。

東京シティガイド検定

日本国内外から東京を訪れる旅行者に対して観光案内を出来る人材を育成する目的に、公益財団法人 東京観光財団が主催している検定です。

東京都の自然、歴史、政治・経済、産業、生活文化、芸術等から50問、そして観光関連の一般常識から20問出題されて、70点以上が合格となります。

ユニバーサルドライバー研修

ユニバーサルデザインタクシーとは、障害の有無にかかわらず、すべての人にとって使いやすいようにはじめから意図してつくられたタクシーのことです。

健康な方はもちろんのこと、足腰の弱い高齢者、 車いす使用者、ベビーカー利用の親子連れ、妊娠中の方など、誰もが利用しやすいタクシーのことを言います。

ユニバーサルドライバー研修では、高齢者や障害者などが持っているさまざまなニーズや特性の理解、お客様との円滑なコミュニケーション方法などを学びます。

観光タクシードライバー研修

専用のテキスト・DVD を使い、観光タクシードライバーに必要な基本的サービスや知識、言葉づかいや身だしなみなどを、講義・ロールプレイングで学ぶ研修です。

タクシー会社の取り組み状況

2012年の東京観光タクシードライバー認定制度発足後に認定された観光タクシードライバー数は約1,000人です。この数字は東京都のタクシードライバー数約64,000人の1.5%に過ぎません。

また、東京観光タクシーの実績は、これまでのところ、業界全体で繁忙期にはひと月に300組程度(1日10組)、閑散期にはひと月に150組程度(1日5組)と言われています。

決して順調とは言えない数字ですが、これは観光タクシーの実績が、観光タクシーに積極的に取り組んでいる限られたタクシー会社に集中していることにも原因があると思われます。

具体的には、自社のホームページで積極的に営業活動を行っているのは、大手では「日本交通」「国際自動車」「日の丸自動車」また制度発足以前から独自にサービスを展開していた「すばる交通」「日立自動車交通」などに限られています。

大手や準大手でも、全く観光タクシーのサービスに触れていない会社や、メニューには載せているけれども積極的にはおすすめしていない会社があります。

東京観光タクシーの問題点

私個人の意見ですが、「東京観光タクシー」という制度をビジネスとして成功させたいのであれば、その進め方に少々問題があるかなと思っています。

タクシー業界が新しいプロジェクトを立ち上げる事に慣れていないかもしれません。

また、画一的なサービスを提供する運輸業という業種には、マーケティングという概念が馴染まないのかももしれません。

具体的には次のとおりです。

市場調査の不足

「東京観光タクシードライバー認定制度」ありきでスタートされたからでしょうか、十分な市場調査が行われなかったような気がします。

少なくとも私には、顧客のニーズが見えてきません。

ニーズが無いのにサービスを提供しても市場に受け入れられるはずがありません。東京都の深夜バスが良い例です。

マーケティングの不足

もしもニーズがあり、それを個社レベルで把握できているのであれば、顧客のニーズを満足させるという視点で、申し込み窓口の多様化、曜日や時間帯別の料金設定(ニーズが高い曜日や時間は料金を高くする)、戦略的な価格設定(一般営業が苦戦する土日の午前中は「3時間1万円ポッキリ」等)も可能なはずです。

そういう発想が無いのは、ニーズの把握やマーケティングができていないからだとと思うしかありません。(※マーケティングとはまず顧客ありきでその顧客が満足するサービスを提供するということです。業界や企業が作ったサービスの押し売りでは事業は成功しません。)

メディアへの露出不足

積極的に営業をしたいのであれば、広告の出稿等(紙・映像・WEB・PPC広告など全ての媒体)メディアへの露出が不足しているように思えます。当然個別会社が収益性を勘案して独自の広告を行うべきで、個別会社のWEBサイトだけでは不十分です。また広告出稿への反応を測定すれば、事後的にニーズの把握も可能です。

個別会社の組織体制の問題

上記のマーケティングにも関係しているのですが、市場のニーズが把握できていれば、個別のタクシー会社も先行投資が必要なはずです。

顧客を満足させるという視点で、観光タクシー制度の企画、PR、顧客からの受付・相談、乗務員手配、マニュアル作成、乗務員教育などの専門部署の設置や人員の配置、相当の費用が必須です。

個別のタクシー会社が「東京観光タクシー」のサービスを始めると言いながら専門の組織を立ち上げられないのは、全く市場の分析を行っていないか、収益確保の見込みが無いからだと思います。

タクシードライバー教育の問題

「東京観光タクシー」サービスの営業を積極的に行うためには、それ相応の数の観光タクシードライバー有資格者を確保しなければなりません。

(毎日、1日に10組の観光タクシーを運行するためには、勤務シフトの関係から、安定的に30人の有資格者が必要。そもそも1日に10組程度の運行で収益性が確保できるかどうかは疑問だが。)

高品質なサービスの提供をしたいのであれば、知識の習得はドライバーまかせではなく、タクシー会社が主体的に行う必要があります。

教育時間確保の問題

会社による研修は必須なのですが、タクシードライバーは労働基準法の制限ギリギリまで働く前提で勤務シフトが組まれているので、一昼夜勤務した「明け」のや「公休日」に会社主催の研修を行うことは、労働基準法違反の問題をはらんでいます。

先行投資としてドライバーの教育を行うのであれば、乗務時間に代えて研修を行い、その時間分の給与は保障するという発想の転換も必要です。

業界一律に行う必要は無いのでは?

「観光タクシーサービス」への投資や維持管理には規模の利益が働くので、タクシー会社は相当数の車両を保有していないと収益性の確保は困難だと思います。

現在のところタクシー業界を挙げてサービスを展開したいと考えているようですが、収益性を確保できない会社が事業に取り組まないのは当然の事です。

もしも採算を度外視してでも制度を維持したいのであれば、制度の趣旨に賛同する会社だけで取り組むことで十分だと思います。

ドライバーの意識の問題

タクシードライバーは、この制度に関して次のようなネガティブな意識を持っています。

  1. 東京シティガイド検定合格程度の知識だけでは、ガイド料金を受け取るレベルの業務を行うのは困難である。
  2. 会社はドライバーに対して自主勉強会の開催を要求するだけで、会社が主体的に営業や制度に取り組む姿勢が見えない。
  3. レベルアップには個人としての勉強も必要だが、運行機会が少なく明確な収入増加への道筋も示されていない観光タクシー業務は、時間とコストをかけてまで取り組む価値が無い。
  4. 観光タクシー運行の約2時間前からは一般営業を行うことはできないので、観光タクシー運行による売上げは決して魅力的とは言えない。
  5. 会社は乗客からのクレームは常に運転手の対応に起因していると考えているので、クレームが入るリスクが高い観光タクシー業務には魅力を感じない。

今後の東京観光タクシーの展開

上記で否定的なお話しばかりをしてしまいましたが、この「東京観光タクシー」というサービスは、現時点では全く全国に浸透していない新規の事業です。

潜在的な顧客は、日本全国だけでなく世界中に存在するので、もしかするととても大きな可能性を秘めたビジネスになるかもしれません。

一方で、一度悪イメージを与えてしまうと、今の社会ではSNS等ですぐに拡散・定着してしまい、それを払拭するのは容易ではありません。

そのため、本当に「東京観光タクシー」というサービスを展開・成功したいのであれば、まず第一に顧客のニーズを把握すること、次に顧客のニーズを満足させるという視点で、大手のタクシー会社(日本交通・国際自動車)や、この事業を推進したい中小の会社(すばる交通・日立自動車交通等)が、高品質のサービスを提供できる体制をしっかり整備することです。

その上で、上手に広告・広報活動を展開すれば、「これまでタクシーを利用しなかった新たな顧客層」の開拓や、「タクシーを使った東京観光という新たなニーズ」の掘り起こしができるかもしれません。

成功の鍵は「市場の把握」と「少数精鋭」にあるかと思っています。

タクシードライバーに関する書籍・本

タクシードライバーの仕事をもっと知りたい、いろいろな運転手の話を聞きたいという方のために、タクシードライバーに関する書籍のご紹介をします。

タクシードライバーに関する書籍は、タクシードライバー本人が書いた本、ノンフィクション・ライターの方が取材を行って書いた本、タクシードライバーを主人公にした小説の3種類に分類されます。

残念ながら、本屋さんにはあまり置いていないのですが、全て「Amazon」などの通販で購入できます。電子書籍のKindle版が出ている本もあります。

「タクシー運転手になって人生大逆転」下田大気:著

著者の下田大気さんは、作家でタレントの志茂田景樹さんの二男。

2009年10月に東京無線グループの「杉並交通」に入社して、翌年には年収800万円を達成したカリスマタクシードライバーです。

現在は、同じ東京無線グループの「飛鳥」でタクシードライバーをする傍ら、テレビやラジオに出演したり人材紹介業を行ったりとマルチにご活躍されています。

この本では、ご自分の半生を振り返りながら、タクシードライバーとして成功した歩みを紹介していますが、運転手としてのキャリアが進むにつれその仕事内容が大きく変わっていることがよくわかります。

下田大気さんが成功したのは、他のどんなタクシードライバーよりも「この世界で成功してやるんだ!」という気持ちが強かったからだと思います。

そして、その気持ちが徹底的なリサーチや営業戦略の構築に繋がり、素晴らしい結果を生み出したのでしょう。

もちろん、高校生の頃からバイクで東京中を走り回っていたので、多くの新人運転手が苦労する「道を覚える」必要がなかったことや、新宿や渋谷などの繁華街に詳しかったことも大きな力になったのでしょう。

しかし、日々の努力の積み重ねがなければそれらの知識も活かすことができません。

この本は新書版で読みやすいので、「タクシーほど気楽な商売はない!」よりもこちらの本を最初に読むほうがいいかもしれません。

「タクシーほど気楽な商売はない」下田大気:著

下田大気さんによる最初の本です。

カリスマタクシードライバーとして頭角を現してきたころに書かれた本なので、下田大気さんがバリバリと仕事を行っている様子が詳しく描かれています。

営業のノウハウもたくさん書かれているのですが、最新本と読み比べてみると、歌舞伎町での営業スタンスなどは大きく変わってきているようです。

下田大気さんのような営業は私にはとても真似が出来ないのですが、随所に参考になることが書かれています。

「東京タクシードライバー」山田清機:著

東京で働く13人のタクシードライバーの人生が、ノンフィクション作家山田清機さんによって描かれています。

それぞれの運転手の方のタクシードライバー以前の姿が丁寧に書かれていて、タクシーの世界には様々な経験をした人たちが集まっていることを改めて感じることができます。

また、「長いあとがき」に書かれている著者の人生も、強烈なインパクトで描かれています。

タクシードライバーの方々が少しだけ営業のノウハウを語っているので、その部分も参考になります。

「あの日にドライブ」萩原浩:著

タクシードライバーが主人公の貴重な小説です。

主人公の牧村伸郎は43歳の元銀行員。あるきっかけで銀行を辞めてしまい、公認会計士試験を受けるまでの腰掛のつもりでタクシードライバーを始めたつもりだったが・・・。

タクシードライバーをしながら、「もう一度人生をやり直すことができれば・・・」と思う男が描かれている小説なのですが、ユーモアを交えた軽快な文章で書かれているので、あまり暗い気持ちにはならずに、一気に読み終えてしまいました。

タクシーの仕事に興味がない方でも楽しめる小説です。

「タクシー裏物語」伊勢正義:著

著者は東京の大手タクシー会社に勤務する現役のタクシードライバーです。

タイトルの「裏物語」というのは、業界内部のお話しですよということのようですね。

最初に出た単行本は2008年に書かれています。

著者の営業所では、月に100万円以上売り上げる人は全体の5%もいて、その人達の年収は700万円以上との話しが出ていてびっくり。

当時は、売上げも良かったのですね。

私も知らないようなことが、たくさん書かれています。

「タクシー業界裏事情」大橋厚雄:著

1996年に書かれた本です。

著者はフリーのノンフィクションライターで、この本ではタクシー会社の経営や組合問題にもメスを入れています。

業界内部の闇を垣間見ることができる貴重な書籍なのですが、情報が古いのが残念です。

逆に、バブル崩壊当時のタクシー業界を知るうえでは参考になる一冊です。

当時は、いろいろなことがあったのですね。